株で勝てる人と負ける人はどこが違うか

相場に強い人と弱い人は何が違うのか──ネット投資家の行動を分析した行動ファイナンスの第一人者が語る「勝つ知恵」とは。

「株」を見るな、「人」を見よ

アベノミクスで株価が上がったのを見て、いまから株の購入を検討している人は、頭を冷やしたほうがいいかもしれません。はっきりいって、もう買い時は終わり。株価の上昇は、日銀総裁に黒田東彦さんが就任した時点で一息ついた感があります。

バブルの再来を期待する声もありますが、それはアベノミクスを過大評価しています。バブルは、資金流入量が継続的に増える余地があるときに起こります。具体的には、投資家たちが増えるかどうか、そして投資額が増えるかどうかです。たとえばライブドアをはじめとした新興企業の株価が上昇した2005年ごろは、株に興味がなかった若者たちがこぞって株を買いました。投資家の層が広がったから、株価も上がったわけです。

では、今回はどうか。いま株を買っているのは65歳以上の年金世代が中心です。『会社四季報』が売り切れ続出らしいですが、いまどき紙媒体に頼るのは年寄りしかいない。アベノミクスが利いているのは中高年層だけで、20代30代はほとんど反応していません。だからバブルにならないというのが私の見立てです。

今後は、金融政策などに一喜一憂して乱高下する展開になるはずです。そのタイミングをつかまえるのも難しいので、株で利益を出そうと思うなら、銘柄を選ぶ必要があるでしょう。

個別銘柄を選ぶときには、業績などのファンダメンタルズにとらわれないほうがいいと思います。株価は需給ではなく、ファンダメルタルズから見て割高か割安かで決まると考えるのが、従来のファイナンス理論でした。しかし、実際の株価はそれでは説明のできない動きをします。たとえば700ドルだったアップル株は、スティーブ・ジョブズがいなくなったいま、400ドルまで下がった。収益状況は大きく変わっていません。変わったのは、投資家の気分です。ジョブズがいたときは永遠に成長し続けるように思えたけど、没後は、永遠なんてありえないよね、という気分に変わった。それで株価も下がったのです。

他の人の気分なんてわからないというなら、利回り重視で選ぶというやり方もあります。いま世界中で低金利が定着してきたので、3〜4%の配当利回りでも十分に魅力的。利回り狙いなら、すでに割高になったリートも選択肢に入ってくるでしょう。

私は世間で「反リフレ派」と目されていますが、個人投資家が国債暴落シナリオにもとづいて投資することはすすめていません。アベノミクスでリフレ政策を進めていくと、理論上、国債は暴落します。ただ、現実に暴落する確率はそれほど高くありません。暴落が起きるには保有者が国債を投げ売らなくてはいけませんが、いまの国債保有者は制度上、あるいはほかに投資先がなくて国債を持っている人たちがほとんど。そのため国債が下がっても、売らずに持ち続けるしかないのです。もちろん財政金融政策は国債暴落のリスクを十分に意識しなくてはいけません。ただ、個人投資家が国債暴落に賭けるのは利口じゃない。その点は強調しておきましょう。