名門再建へ PL新監督に大物OB吉村氏ら浮上

甲子園大会で春夏7度、全国制覇を成し遂げた高校野球の名門・PL学園(大阪)の次期監督に、元巨人の吉村禎章氏(50)ら大物プロ野球OBの名前が浮上していることが分かった。第95回全国高等学校野球選手権記念大阪大会は6日に開幕したが、同校は部員の暴力事件により、対外試合禁止処分中。責任を取る形で退任した監督不在のまま練習を続けている。そんな「落ちた名門」は、元プロ野球選手が高校の指導者になれる新制度による、ドラスチックな再建を目指すという。

 PL学園が激震に見舞われたのは今春だった。2月23日に、部内暴力が発生。事態を重く見た日本学生野球協会から4月9日に、6か月間(2月24日〜8月23日)の対外試合禁止処分を突きつけられた。3年生にとっての「最後の夏」は、はかなく消え、河野有道監督は退任。4月16日付でPL教団職員に異動した。

 いまだに次期監督が決まらない異常事態の中…。同校関係者の間でささやかれている再建プランが判明した。それが“プロ野球OB監督”の起用だ。

「8月23日まで試合禁止だから、監督人事はそこまで焦らなくていい。暫定的に監督を置いて…」と声を潜める同校関係者は、同校OBの元巨人・吉村禎章氏、元横浜・野村弘樹氏(44)、元阪神・片岡篤史氏(44)の3人の名を挙げ「プロアマ規定が緩和される年内、もしくは年明けにも監督に就く可能性はある」とズバリ指摘した。

 これまではプロ野球経験者が高校の監督になるには、2年間の教諭経験が必須だったが、6月18日に新制度が承認され、短期間の座学の研修だけで元プロが高校の指導者になれるようになった。プロ側の研修を受けた後、学生野球側の研修を受けるというもので、初年度の研修はプロ側が7月28日と8月10日、学生野球側が12月13、14日に行われる。この制度を利用すれば、来年から新監督を迎えることは可能だ。名門の再建を、PL学園の実情を知る大物OBに託すというわけだ。

 とはいえ、懸念されているのが報酬面での問題だ。「プロに選手を輩出している甲子園常連校クラスの監督は、年収1000万円前後といわれている。プロ出身者はタレント活動や評論活動をしている人が多く、高校野球の監督に転身しても年収が下がる可能性が高い」(高校球界関係者)

 そのため前出のPL学園関係者は、同校の大物OBである清原和博(45)、桑田真澄(45)両氏については「ギャラがかかって難しい」と顔をしかめた。タレントとしての収入だけではなく、近い将来、プロ野球の監督、コーチとしてユニホームを着る可能性も高い。吉村、野村、片岡の3氏も同様の理由から、すんなりまとまらない可能性もあるが、すでに7月28日の研修を受けることを決めた、元プロでPL学園OBの選手もいる(別項参照)。河野前監督が次期監督として掲げる「(PL)教団のことを知っている人」にも合致していることから「母校再建のために」となれば、収入面での問題があろうとも、一肌脱ごうというOBも多いはずだ。

 PL学園側は「何とかしたい」と野球部の復活を願っている。実は、日本学生野球協会は6か月の対外試合禁止処分を言い渡した裏で、処分期間の軽減策を探っていた。「もし、PLが抜本的な改善策を取れば、大阪府予選への出場も認める話が水面下で出ていた。過去にも処分期間の短縮はあったので」(日本学生野球協会関係者)

 PL学園のごく一部の関係者もその動きを察知していながら、厳罰を真摯に受け止めた。「付け焼き刃的な策で逃げず、現状に向き合って、強豪校の看板を取り戻したいという思いがあったからだろう」(前出高校球界関係者)。そして抜本的な改革のために必要なのが、PLのいいところも悪いところも知り尽くしているプロOB監督の起用ということ。過去に何度も部内暴力を起こしたPL学園は、今度こそ本気で生まれ変わろうとしている。