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検索→購入はもう古い!? 「知らない本」に出会える新機能が続々。5分でわかる「電子書籍」最前線

7月3日から6日まで東京ビッグサイトで行われていた「第20回 東京国際ブックフェア」。1360社にもおよぶ企業が出展する日本最大の本の見本市だが、そこでリアルとバーチャルを結ぶ、“電子書籍の一歩先の未来”を見ることができた。電子書籍を持っていない人も、持っている人も知っておきたい、5分でわかる「電子書籍の新潮流」。

本の表紙をスキャンして電子書籍を購入

話題にはなるものの、普及したとはまだまだ言えない「電子書籍」。コンテンツの少なさや端末ごとに違う使い勝手、乱立するプラットフォームなど課題は山積みだ。そうした状況のなか、国内の大手出版社や印刷会社が推し進めているのが電子書籍と“リアル書店”との連携。アップルやAmazon.comなどの「黒船」がまだ手を出していない、街なかのリアル書店と組むことを武器に電子書籍のユーザーを増やそうというのが狙いのようだ。

 7月3日から6日まで東京ビッグサイトで行われていた「第20回 東京国際ブックフェア」ではリアル書店との連携機能を強化した電子書籍が多数展示されていた。なかでも目立っていたのが、「店内を巡っていたらお気に入りの本が見つかった」というような、リアル書店ならではの“偶然の出会い”ができる電子書籍だ。

 トッパングループの「BookLive!」が展示していたのが、スマホ/タブレット向けのアプリ「BookLive! カメラ(仮)」。リアル書店の店頭などで本の表紙にスマホのカメラをかざすと、該当する電子書籍が自動で検索され、その場で立ち読みやダウンロード購入ができる。同社が持つ書籍データと画像認識技術を組み合わせたサービスで、実現すれば電子書籍の買い方が大きく変わりそうだ。アプリで認識できる画像は本の表紙だけでなく、あらかじめ設定しておけば任意の写真も可能。そのため、「例えば本棚の写真をポスターにして壁一面に貼っておけば“在庫ゼロ”の書店もできる」(BookLive!)という。

 気になるのが書店の立場だ。来店した客が陳列してある本の表紙を勝手に撮影して電子書籍をダウンロード購入するだけでは書店側に利益は出ないはず。だが、「BookLive! カメラ(仮)」は、アプリに搭載したGPS機能などでユーザーが電子書籍を購入した書店を特定。その書店に対し販売手数料を戻す仕組みを考えている。また、小さな書店など在庫を多く用意できない店舗でも、表紙写真を並べたカタログを用意しておけば、電子書籍の販売で利益を上げることもできる。サービスのスタート時期は年内を考えているという。

電子書籍をリアル書店で“大人買い”

リアル書店の本棚に電子書籍端末を本のように並べて販売するという取り組みも考えられている。

 大日本印刷が参考出展していた電子書籍端末「honto pocket」のパッケージには表紙や背表紙があり、見た目は「本」そのもの。リアル書店で他の本と並べて陳列されていても違和感はなさそうだ。

 honto pocketの最大の売りは、漫画や小説などをすでにインストールした状態で販売すること。これまでのように、電子書籍端末を購入してからコンテンツを探してダウンロードする、といった手間が必要ないのだ。ネットワークに接続してダウンロードするという作業は、「デジタルが苦手な人にとっては大きな障壁」(大日本印刷)。欲しい本をリアル書店で見つけ、レジで購入し、電子書籍で読む、というシンプルな仕組みで初心者層を取り込む狙いだ。

 価格も期待できる。大日本印刷によると、例えば漫画など、シリーズ全巻分のデータが入った電子書籍端末を、「実際の本を全巻買った場合とほぼ同じ価格で展開したい」という。端末代を考えずに漫画や小説のシリーズ全巻を電子書籍で一気に“大人買い”できるのは大きな魅力だ。

「バーチャル中吊り」から読みたい記事だけを買う

雑誌の中吊り広告にある記事を電子書籍で手軽に読めるサービスも参考出展されていた。東京国際ブックフェアと同時に開催された「第17回 国際電子出版EXPO」の凸版印刷ブースで展示されていた「中吊アプリ」はスマホ用のアプリ。画面に表示されたバーチャル中吊りの気になる記事タイトルをタップすると、その記事だけを購入して読むことができる。普段買わないような雑誌でも、中吊りで見つけた読みたい記事だけをその場で買えるのは便利だ。

 電車内を再現したアプリの画面をスワイプすると中吊り広告が次々に切り替わる。「検索」がメインとなる、従来の電子書籍サービスでは難しかった“偶然の出会い”を中吊り広告というインターフェースで実現しているのだ。気に入った記事の雑誌は一冊単位でも買えるほか、GPS機能と連携し、現在地の近くにあるリアル書店の場所を地図上に表示もできる。バーチャルの中吊り広告からリアル書店への誘導も行っているのだ。

 なお、実際の電車内にある本物の中吊り広告にカメラをかざし、記事を購入することはできない。電車内でのマナーやトラブルを考慮し、そうした機能は搭載していないという。

児童書でも“偶然の出会い”が

“偶然の出会い”を取り入れた、子供向けの電子書籍サービスも出展されていた。

 大日本印刷が参考出展した「honto for ニンテンドー3DS」は、その名の通り「ニンテンドー3DS」向けの無料電子書籍ソフト。コンテンツの販売は「ニンテンドーeショップ」を通じて行い、ラインアップは数百円の児童書が中心になる予定という。

 他の電子書籍にない特徴は、ニンテンドー3DSの「すれちがい通信」機能を活用しているところ。同じソフトを使っているユーザーであれば、読んでいる本やお薦めの本などの情報をすれちがい通信で交換できるという。ホーム画面の「みんなの声」にタッチするとすれちがい通信で取得した本の情報が画面上に並ぶ。

 用意するコンテンツは「対象年齢」や「ジャンル」などで絞り込みできるというが、友人が読んでいる本などをすれちがい通信で偶然に知ることができるというのは新しい。3DSならではの方法でレコメンド機能を取り入れているのはユニーク。秋頃のサービス開始を考えているという。

現在の電子書籍サービスは、膨大な数のコンテンツのなかから目的の本を「検索」して購入するというのが主な使い方だ。出版社からの「おすすめ」や「新刊」、「人気ランキング」などのレコメンド機能で検索では出てこない新たなコンテンツを紹介してはいるが、それでもまだ十分とはいえない。リアル書店との連動などで、本との“偶然の出会い”を取り入れ、ユーザーの「知らない本を知りたい」という潜在的な欲求を満たせるのかが注目されている。