iPS細胞 臨床研究の実施計画を了承…厚生科学審部会

厚生労働省の厚生科学審議会科学技術部会(部会長・永井良三自治医大学長)は12日、理化学研究所などが申請していた、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を目の病気「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」の治療に使う臨床研究の実施計画を了承した。同部会の下にある審査委員会が移植前に遺伝子異常の有無を審査するなど、安全体制を盛り込んだ。世界初のiPS細胞の臨床応用に向け、近く厚労相の了承を経て手続きが完了する。

 実施計画は、理研などが今年2月28日に厚労省に申請し、6月26日に審査委が承認した。将来的にがん化するリスクを減らすため、iPS細胞の詳細な遺伝子解析をして研究機関の倫理委員会と厚労省の審査委に報告し、さらにがん研究の専門家から評価を受けることなどを理研側に求めた。iPS細胞の作製から患者への移植実施までの間に、改めて安全性を審査する体制を盛り込んだ上で、同部会として了承した。

 幹細胞を使った臨床研究で、国が移植前の段階で研究機関に詳細な報告を求めるのは初めて。審査後、永井部会長は「iPS細胞は未知の細胞。とにかく慎重に進めてほしい」と述べた。

 iPS細胞を使った臨床研究は、理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーらが計画した。目の網膜中心部の「黄斑」が傷ついて視野がゆがんだり暗くなったりし、悪化すると失明に至る「加齢黄斑変性」の患者のうち、網膜の裏側に余分な血管が生える「滲出(しんしゅつ)型」が対象。薬が効かない患者6人を選び、早ければ来年夏にも移植が実施される。