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記憶があてにならない理由とその改善策

人間の記憶力とは、気まぐれで不可解であてにならないものです。何もかも正確に暗記したと思っていたのに、どこかの段階で間違って覚えていた、なんてよくあること。人間の記憶力はなぜあてにならないのか、その理由を紹介した先日の記事に続きまして、今回は改善策を追求してみたいと思います。

記憶力を高めるためにやるべきこと

記憶力を高めることは可能です。ただし、メンタルトレーニングを毎日続けていれば記憶力が向上するようによく言われていますが、そう簡単にはいきません。科学的に効果が証明された手法は確かに存在しますが、記憶力の向上はその人のライフスタイルに密接に関わる事柄なのです。

定期的な運動

運動すると脳にさまざまなプラスの作用が起きることは知られています。そのひとつが記憶力の向上です。

記憶に運動が果たす役割は驚くほど複雑です。「Behavioral Neuroscience」、「The Journal of American Geriatrics Society」、「The Journal of Aging Research」などの学術誌に掲載された複数の研究にも、運動が記憶に及ぼす大きな影響についての記述があります。

米紙「New York Times」にも、最近の研究成果をまとめた記事がありました。

比較的年齢の高い女性を対象にした実験を主導している、ブリティッシュ・コロンビア大学脳研究センターのTeresa Liu-Ambrose准教授によると、脳の健康を保つには有酸素運動と筋トレを組み合わせるのが効果的だとわかってきているそうです。Liu-Ambrose准教授によれば、タイプの違う運動は「それぞれ異なった認知要素に働きかける」そうで、身体や脳に放たれるタンパク質の種類も、運動によって変わってくる可能性があるようです。

(中略)

さらにLiu-Ambrose准教授は、運動をすると、単に覚えていることを忘れにくくなるだけでなく、「実際に記憶力の向上が認められる」と述べています。今日運動しようか迷っている人にとっては、ぜひ覚えておく価値がある実験結果です。

運動が認知機能を向上させ、記憶を蓄えたり引き出したりする能力が強化されるという仕組みです。もっと簡単に言えば、「脳が健康であればあるほど、何かを思い出せるようになる可能性が高まる」ということです。

睡眠の質を上げる

睡眠と記憶の関係は熱心に研究されているテーマで、記憶の形成に睡眠が果たす大きな役割も明らかになっています。

睡眠が記憶に影響を与える道筋には、大きく分けて2つあります。ハーバード大学医学大学院のRobert Stickgold氏は、アメリカの公共ラジオ局「NPR」の番組で、それぞれの道筋を以下のように説明しています。


眠りのすべての段階が、記憶に関係していることがわかっています。ただし、その関わり方はそれぞれ異なります。

標準的な実験では、被験者にある課題を覚えてもらうことから始めます。記憶する対象は、単語のリストやタイピングの例文だったりと、さまざまな記憶力を試す問題が考えられます。

(中略)

課題を覚えてもらってから12時間後の成績を比較すると、この時間中ずっと起きていた人よりも、途中で寝る機会のあった人のほうが常に好成績を挙げていました。

眠り始めてすぐに訪れる深い眠りが記憶に影響を及ぼしている可能性があります。こうした課題に当てはまるものとしては、言語記憶などがあります。この場合、目覚めたあとにどのくらい成績を向上させられるかは、ノンレム睡眠と呼ばれる深い眠りをどれだけ取れるかにかかっています。

これに対して、ほかの課題では、レム睡眠の時間の多さと関係があるように思われるケースもあります。

簡単に言うと、眠りの各段階は、それぞれに異なるタイプの記憶の形成に寄与していると考えられています。したがって、宣言的記憶(事実や知識など)がノンレム睡眠(深い眠り)によって強化されるのに対し、潜在記憶(必ずしも意識されているとは限らない長期記憶で、自転車の乗り方や靴ひもの結び方などがこれに当てはまります)の場合は、レム睡眠によって強化されます。

ざっくり言うと、毎晩よく眠れれば記憶力も高まると考えられているわけです。

New York Timesでは、眠りと記憶の重要性をこんなふうにわかりやすく表現しています。

睡眠不足は、知らないあいだに、学習や記憶、判断、問題解決の能力などの精神機能に影響を与えます。人の脳では、眠っている間に、「新しく学んだこと」と「記憶」をつなぐ経路ができあがります。そしてこの経路が最適に機能するためには、適度な睡眠が必要となるのです。たっぷりと休息をとった人は課題を学習する能力も優れ、学んだことを思い出しやすくなっているはずです。加齢とともに認知機能が衰えると言われますが、これについても慢性的な睡眠不足が原因のひとつとも考えられます。

ここまでの話をまとめると、良い睡眠は長期的に見て記憶力の向上に役立つ可能性があるということです。以前の記事でも紹介したように、睡眠サイクルの見直しはそれほど難しいことではありません。あなたが良いサイクルをきちんと打ち立てれば、記憶力も良い状態を維持できるはずです。

Lifehackerの記事で学ぶ「記憶力向上テクニック」

あなたの記憶力良い状態に保っておくためには、定期的なメンテナンスと多少のトレーニングが必要です。「勉強するだけで魔法のように記憶力が向上する」なんてうまい話はありません。

あなたが鍵を置いた場所を忘れやすいタイプなら、たぶんこれからも鍵をなくし続けることでしょう。とはいえ、ある種のテクニックを使えば、あなたの記憶力、さらには記憶に必要となる認識力を向上させることができます。

この話題はこれまでにもライフハッカーで何度も取り上げてきましたが、その中から、「記憶力を向上させるテクニック」の入った記事をいくつか紹介しましょう。

「チャンキング」で記憶力をアップ:「チャンキング」と呼ばれるテクニックでは、理由編でも触れたパターン認識を用いて記憶力を伸ばします。ごく簡単に説明すると、例えば電話番号を覚える際に、ただ数字を頭に叩き込むのではなく、電話機のキーに書いてある文字で記憶するといった手法です

情報と奇抜なビジュアルを組み合わせる:細かい事柄をいくつか覚えておく必要がある時には、その情報を何か突拍子のないイメージと組み合わせると思い出しやすくなります。例えば、食料品店で牛乳とバナナを買うのを忘れたくない時には、「斧を持った巨大なバナナが、乳搾り直前の雌牛を追いかけ回している」というビジュアルを思い描くといった具合です

昼寝をする:睡眠が記憶力に直接影響していることはこの記事の中ほどで触れたとおりですが、短時間の昼寝にも効果があります。1日のどこかでちょっと眠れるタイミングがあるなら、ぜひ試してみてください。良い昼寝は、記憶力と学習能力を向上させるのに効果的なツールです。昼寝は無理という場合は、瞑想にも同等の効果があることがわかっています

記憶とは奇妙なもので、そのメカニズムにも不可思議な点があります。当てにならない記憶であっても、それでも私たちは記憶を頼るしかありません。記憶力の向上は簡単ではありませんが、ある程度は訓練によって脳に記憶を叩きこむこともできます。ただし今のところ、科学的にもっとも効果のある記憶法は確立されていません。適切な睡眠と運動をしのぐ切り札はなさそうです。