参院選 自民公約の法人減税って何?

7月21日に投票が行われる参院選に向けて、自民党は公約の中に法人減税を盛り込みました。法人減税への言及は、安倍首相自らが強く望んで実現したといわれています。その理由は安倍首相が株価の反応を強く意識しているからです。アベノミクスを発表した直後は、株価は素直に反応して大幅に上昇しましたが、最近では株価の上昇が一服しています。株式市場に投資をしている投資家の多くは、法人税の減税を望んでいるといわれており、何としても株価を上げたい安倍首相は、法人税の減税に言及しはじめたというわけです。

財政難で財務省が反対

ですが、政府にはおいそれと法人税を減税することができない事情があります。日本の財政が非常に苦しく、政府の台所を預かる財務省が強く反対しているのです。その結果、法人税の減税ほどインパクトはないものの、それに近い政策で、ある程度の税収も維持できる投資減税というプランが急浮上してきました。安倍首相としては、まず最初に投資減税を打ち出し、株価が反応しないようであれば、腹をくくって法人税減税を打ち出すという2段構えの作戦を採用したわけです。

 投資減税と法人税減税は言葉は似ていますが内容はまったく異なります。投資減税は、企業が設備投資を行った場合に税金が安くなるというだけですが、全般的な法人税の減税は企業の利益にかかる税金のすべてを引き下げるというもので、企業の経営環境に対する影響はまるで違います。

「投資減税」だけなら効果小さい

もし減税が投資減税だけにとどまった場合には、景気の回復にはそれほど効果がないといわれています。企業が設備投資を行わないのは、税金が高いからではなく、先行きの見通しが立たないからです。一方、全般的な法人税の減税が行われた場合には、株価は上昇し、海外もアベノミクスに対して高い評価を下す可能性が高くなります。海外からは安い税金に惹かれて多くの会社が日本に進出してくるかもしれません。

 法人税を減税するデメリットは、先にも触れましたが日本の財政がさらに悪化することです。実は規制緩和をもっと積極的に行えば、減税に頼ることなく、株価を上昇させることができるともいわれています。しかし規制緩和は失業者の増大など痛みを伴うため、国内の賛否両論が激しくなかなか実現することができません。安倍首相のホンネとしては、法人税の減税には踏み込まずに、投資減税の段階で株価が上がって欲しいというところでしょう。有権者としては、このあたりをどう判断するのかがポイントということになります。