ダイソン、高級扇風機で存在感 日本勢もDCモーター搭載機で巻き返し

20130709-00000006-fsi-000-5-view各地で猛暑日を記録する中、自然に近い風を再現する高価格扇風機の市場も熱気を帯びてきた。「羽根のない扇風機」で注目を集めた英ダイソンは今年新たに、日本の和室にあった背の低いモデルを投入、シェア拡大を目指す。一方、日本勢は高い省エネ性能や熱中症を予防する新機能などで対抗する。

 9日、和歌山県高野町の高野山総本山金剛峯寺。標高900メートルとはいえ、日中は汗ばむような暑さの中、廊下に置かれた細長い円状の機器から涼しい風が吹き出している。

 掃除機で知られるダイソンが提供した羽根のない扇風機「エアマルチプライアーAM02リビングファン」(想定価格5万4000円)。約30台が大広間前の廊下や瞑想(めいそう)を行う道場などに置かれた。東山教清・開創法会事務局課長は「参拝者に自然に近い空気で涼を取ってもらいたい。省エネにもつながる」と話す。

 2009年に日本で扇風機を発売したダイソンは、省エネ性能の高いDCモーターで空気を吸い込み、ムラのない気流を生み出す独自メカニズムで、3万円以上の扇風機市場で約30%のシェアを持つ。リビングファンは座って生活することが多い日本向けに今年投入した。従来モデルより背丈が13センチ程度低く、最小消費電力8ワットを達成した。

 11年の東日本大震災以降、節電意識が高まり、エアコンより消費電力が少ない扇風機に注目が集まった。さらに、従来の扇風機より電力を消費せず、風を細かく制御できるDCモーターを使った高価格モデルが販売を伸ばしている。

 DCモーターと二重構造の羽根で「自然界の風を再現」し、販売を伸ばしているのがベンチャー企業のバルミューダ(東京都武蔵野市)だ。10年に発売した最初のモデルは最小消費電力4ワットで、計画の2倍の台数を売り上げた。今年投入した「グリーンファン2プラス」は同2ワットで、バッテリー内蔵のコードレスモデル(4万4800円)だ。

 出遅れた感のある日本の家電大手も巻き返しに動く。パナソニックは今年初めて、DCモーター採用の「F−CJ329」(3万5000円前後)を投入。最小消費電力2ワットで、細かく風速を制御し「体の冷やしすぎを抑える」。シャープはDCモーター搭載の「コードレス3Dファン」(3万5000円前後)などに熱中症の危険性が高まる温度や湿度になると光と音で知らせる「みはり機能」を搭載。「安全」で需要を取り込む狙いだ。