アベノミクスで法人の宴会や出張が復調 年後半の伸長に期待

企業業績の回復を受け、ビジネス利用の宴会需要や出張が復調してきた。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安傾向や消費ムードの改善が追い風になっている。関連業界では、実体経済が本格的に回復する年後半以降、「目に見えて(需要が)伸びる」(関係者)ことを期待している。

 「6月以降、チケットなどの法人利用客数が前年同月比で1割ほど増えた。企業が開くホテルでの催事や宴会が回復したようで、終了後の乗車が増えている」。都内大手タクシー会社の営業部長はこう話す。

 ザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区)では、法人接待の多いレストラン5店の利用が4、5月で人数、売上高とも前年同期比で約3割増。法人の宴会場予約は4〜9月で同1割増で、「新商品発表会や顧客招待会での利用が増えている」(担当者)。帝国ホテルでも最近、企業主催の宴会件数が前年同期比で約5%増えたという。

 国内出張も活況だ。日本旅行の企画商品で、地方から東京行きの宿泊と交通をセットにした「出張パック」の集客数は4〜6月で前年同期比で15%増えた。またJR東海が扱う東海道・山陽新幹線のチケットレスサービス「エクスプレス・カード」の7月の予約状況は前年同月比10%増で、ビジネス利用が相当数を占めるとみられる。

 海外出張では日本航空や全日本空輸で、北米や東南アジア路線のビジネスクラス利用が春先から堅調という。特に北米路線は「自動車関連業界の利用が増えている」(全日空)。企業の海外視察旅行を企画するJTBのグループ企業では、今年度下期(10月〜来年3月)の取扱高が前年比プラスとなる見通しだ。

 こうしたビジネス利用の増加が目立ってきたのは4、5月にかけての時期で、東京証券取引所に上場する企業の、2013年3月期連結決算発表が本格化してきた時期と重なる。決算ではアベノミクスへの期待から円安が進んだことで、自動車や電機など輸出関連の製造業を中心に業績が大きく改善した。

 法人需要の関係業界は今後、アベノミクスが実体経済に波及して回復が本格化することに期待をかける。

 帝国ホテルの担当者は「宴会利用は、企業業績の回復から半年くらい遅れて表れてくる傾向がある。今秋以降に期待したい」と話す。