短観 大企業中心の産業構造が鮮明に

日銀は7月1日、6月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。企業の景況感を示す指数(業況判断DI)は、これまで冴えない展開が続いてきた製造業において大幅に数値が改善した。中堅、中小企業の指数にも改善が見られるが、大企業に比べると伸びは小さい。大企業、中堅企業の順に景況感は改善してきており、徐々に中小企業にも波及している状況がうかがえる。

 業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。大企業の製造業は、3月の前回調査に比べて12ポイント改善し、プラス4になった。前回調査では4ポイントの改善だったので、今回の改善幅は大きい。

 これまで非製造業の指標は良好だったが、製造業の指標は低迷が続いていた。だがここにきて、ようやく製造業にも顕著な改善が見られるようになった。

中小企業は依然として厳しい

大企業に続いて中堅企業にも改善が見られるが、中小企業は依然として厳しい状況が続いている。中小企業の製造業は5ポイント改善しているものの、絶対値はマイナス14と中堅企業の数値(マイナス4)と比べるとかなり厳しい。ただ3月の調査ではマイナス19だったことを考えると、徐々に改善してきていることは間違いない。

 前回の調査までは、自動車など好調な業種の数値改善ばかりが目立っていたが、今回の調査では逆にこれまで不調だった業種の数値上昇が著しい。円安の進展によって全業種で効果が表れてきていると考えてよいだろう。

 一方、大企業、中堅企業、中小企業の順で景況感が改善し、中小企業はなかなか恩恵を受けられないという構図がよりはっきりしてきている。このことは、日本の産業構造が、いまだに大企業を頂点とするピラミッド型になっており、中小企業が大企業に対して従属的立場にあることをうかがわせる。

産業構造問題を避けてきたアベノミクス

日本の下請け構造、ケイレツ構造は日本の伝統的な姿と言われているが実はそうではない。戦前には今のような目立った系列構造はなく、多くが戦争中の国家統制によって強制的につくられたものである。戦前は下請け企業であっても条件が悪ければ、すぐに顧客を変えており、現在のような封建的な上下関係はなかった。
 
 モノが絶対的に不足していた高度成長時代には、こうしたピラミッド構造もうまく作用したが、商品やサービスが多様化した現在では、この産業構造は最適とはいえなくなってきている。アベノミクスでは、この問題を意図的に避けてきたフシがある。景気の底入れが見えつつある今、そろそろこうした産業構造転換の議論が必要な時期に差し掛かっている。

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