本田のミラン移籍の可能性は

20130613-00000221-sph-000-0-view本田圭佑がドーハでのW杯最終予選イラク戦をベンチに座ったまま終えた頃、イタリアでは「本田、ミラン入りへ前進」の一報が駆け巡っていた。

 11日夜、ロシア日刊紙『Izvestia』の報道を受ける形で、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙が「CSKAの日本人MFにミランが興味を示している」と伝えたのだ。リアルタイムで更新される同紙HPの移籍速報サイトでは、シャルケやセビージャなどの4クラブの名前も挙がった。今夏の移籍市場に向けて、本田の周辺が動き始めたことは間違いないが、盛んに名前が取沙汰されているミラン入りの可能性はどの程度あるのか。

来季、ミランは4-3-1-2へ移行

今月初旬、ミランのアッレグリ監督は、オーナーのベルルスコーニ前首相との夕食に臨み、来季の続投に確約を取り付けた。ただし、ワンマンぶりで知られるベルルスコーニは不仲の指揮官へ全面的信任を与えず、来季のチーム構想について「2トップの後ろにトレクアルティスタ(トップ下)を置くべし」というオーナー命令をつきつけた。これによって、来季のミランは4-3-1-2へ移行することが決定的になった。

 クラブの厳しい財政事情によって、トップチームは少数精鋭の25人編成とすることも決まった。ただし、8月下旬に予定されている欧州CLプレーオフは、是が非でも勝ち抜かなくてはならない。

 若手重用路線を打ち出したミランは、次世代のトップ下としてイタリアU21代表サポナーラを獲得済みだが、それでも中盤のポジションは手薄だ。背番号10を背負うMFボアテングが日に日にプレミアリーグ復帰へ傾く中、ガッリアーニ副会長を筆頭とするフロントにとって、中盤の即戦力獲得は急務となりつつある。

 コンフェデレーションズ杯に出場するイタリア代表MFディアマンティこそ、ミランのファースト・ターゲットだ。王者ユヴェントスも熱望する天才レフティーの移籍金相場は約1000万ユーロで、去就を明らかにするのはコンフェデ後と見られている。

本田の移籍相場は500万ユーロ前後

昨年1月のラツィオ移籍交渉を丹念に取材したローマ地元紙の記者によれば、現在の本田の市場相場は500万ユーロ前後。ミランにとっても十分捻出可能な金額であり、トップ下からボランチまでこなせる本田は、層が薄くなる中盤で貴重な戦力になりうる。長く移籍の障壁とされてきたセリエAのEU圏外選手獲得制限も、3人枠への拡大に向けて各クラブの会長たちがリーグ機構と協会へ圧力を強めている。

 残るはCSKA側の思惑だ。ロシア全土にオリーブオイルを売りさばくイタリア人ビジネスマンが言っていた。

 「ロシア人との交渉は難しい。相手の出方を見たり、値引きの感触を探ったり、といった西欧流の交渉術が使えない。即断即決なんだよ。彼らの腹づもりを読めなければ、話し合いを続けても無駄だ」

 ミラン側のチーム事情や市場のタイミングなど、移籍実現へクリアすべき条件は多い。だが、つねに結果を重視する本田のプレースタイルや勝負へのメンタリティは、W杯を4度制した伝統国のそれと非常に似通っている。コンフェデ杯は、彼にとって自らの市場プライオリティを上げる絶好のチャンスだ。本田を巡る動きはイタリア戦で風雲急を告げるに違いない。

 過去無数にあった“エアオファー”と比べ、今夏の状況は具体的だ。ライバル候補たちの動向次第だが、本田のミラン移籍の目は十分あるように思う。