MBA取得で出世できる?−社会人の勉強を考える

20130614-00010003-wordleaf-000-4-viewみなさんは「MBA(Master of Business Administration)」にどのようなイメージをお持ちでしょうか。そろそろ来春の入学を目指して、学校探しなど準備をされている方もいらっしゃるかと思います。MBAに限らず、新たな学歴を、と考えている方も多いかも知れません。社会人が勉強することの意味や、また学位や学歴の意味を、MBAの例を見ながら考えてみたいと思います。

MBAって何?

MBAは、19世紀の近代化の流れの中で、経営も近代的、つまり科学的な学問にしていこうという流れの中で生まれた経営学の実務家養成コースです(ビジネススクールとも言われます)。日本においては2003年に文部科学省が従来の研究家を養成する大学院制度とは別に修士論文の必要ない専門職大学院制度を作り、2007年から「経営学修士」と「経営管理修士」の学位発行が認められました。日本でもすぐにMBAブームが起こり、MBAを謳ったビジネス本なども数多く出版され続けています。

日本でのMBAの価値は?

MBAが米国を発祥とするため、それを巡る議論の中でよく聞かれるものが、日本国内のビジネススクールに意味があるのか、というものです。確かに、海外、特に英米圏で取得すれば就職・転職先をグローバルに選ぶことができます。また「日本版MBA」は海外に比べ、研究寄りで、即戦力を育成するカリキュラムもスタッフも整備されておらず、取得しても直接採用や昇進に繋がるわけでもないという話も聞きます。

 「日本においてMBAの取得は成功へのパスポートというわけではなく、履歴書に書く学歴が一行加わったに過ぎない、と考えた方が良いです。能力やノウハウが身についているかによって初めて経験・知識・人脈が活かせるようになるのであって、取得しただけでは、企業・社会にとって価値あるものとはみなされません」というのは、今回お話を伺った琉球大学の大角玉樹教授(経営学)の言葉です。大角教授は、「企業は結果を出せるかどうかに価値を見出すので、海外のように職種そのものに修士号を要求することの少ない日本では、MBAが成功へのプラチナチケットであるというような勘違いはしない方が良い」と、釘を刺します。また、日本でも、ビジネススクールやMBAの意義が社会的に認められて、単なるブームではなく大きなムーブメントになって欲しかったのですが、専門職大学院の付加価値を高めることができるような大学制度の抜本的な改革には至らず、結果として開設した大学の多くが学生集めに苦戦し、MBAに期待していた職業人達も幻想から覚めたのではないか、と分析しています。

国内での取得者の声は…

国内でMBAを取得し、取材に応じてくださった某大手企業の管理職の方は、きっかけは出世競争で燃え尽き感があったことと、自社の経営方針に疑問を持ったことだったといいます。MBA取得でプラスになったことは、一生勉強だと気づき努力癖がついたことと、業界や職種を超えて飛躍的に交際範囲が広がったことで、取得後にチャレンジしたことが全て今に繋がっているといいます。しかし、「取得に当たってキャリアに空白を作ったことは反省点だった」と振り返られました。業務と平行するという選択肢もしっかり吟味すべき、ということですね。

 結局、MBAに限らず、学位や肩書きに幻想を抱くのではなく、大志と情熱を持って学ぶ姿勢が、その称号の価値を高めていくことに繋がるのではないでしょうか。また、そういう考えの人が増えることで、少しずつ、学位や学歴ではなく、自然に人柄や資質、実力を重視するような社会が実現するのではないかと思います。