消費税転嫁法って何?――「消費税還元セール」を禁止

「消費税還元セール」といった広告や宣伝の禁止を盛り込んだ、いわゆる「消費税転嫁法」が6月5日に成立しました。一見、消費者にとってはありがたいと思われる「消費税還元セール」がなぜいけないのでしょうか。それが消費税の「転嫁」とどういう関係があるのでしょうか。

 今、私たちが買い物をすると、商品に5%の消費税がついてきます。その消費税が、来年(2014年)4月には8%に、さらに2015年10月には10%に引き上げられる予定です。

 そうなると当然、多くの人が買い控えをするようになることが予想されます。そこでスーパーなどの小売店が消費者離れを防ぐために行うとみられているのが、「消費税還元セール」などと銘打った、安売りによる販売です。

「下請けいじめ」の防止が狙い

もっとも、スーパーなどの大手小売店も、単純に値引きをしたら自分たちの利益が減ってしまいます。そこで小売店の中には、納入業者に値下げを要求し、消費税増税分を価格に転嫁しないように働きかけるところも出てくる恐れがあるとみられています。

 消費税転嫁法は、このように中小の納入業者が大企業から消費税分の価格上乗せを拒否される「下請けいじめ」の防止を目的とした法律です。「消費税還元」などのセールの表現を禁止したのも、大手が納入業者に対して仕入れ値の減額を要求し、それを原資にしたセールを行うことを防ぐためです。

 ところが、セールの表現規制について大手スーパーなどの小売業者や野党が反発。セブン&アイ・ホールディングスは「セールには消費を喚起する面もある。規制は景気回復を遅らせる」としています(毎日新聞4/26)。このため、増税時のセール表示については、「春の生活応援セール」や「3%値下げ」といった、消費税や税の文言のない表現であれば、容認されることになりました。

「税抜き」価格表示を容認

ただし実際には、「仕事を切られる」という恐れから、下請け納入者側が「大手の圧力でなく自主的に値下げを申し出た」という形で消費増税分を価格に転嫁しないケースも想定され、消費税転嫁法の効果を疑問視する声もあります。

 なお消費税転嫁法では、税込み価格を表示する「総額表示」の義務も緩和されます。つまり、いままで規制されてきた「税抜き」の価格表示も容認されることになります。税込みと税抜きの店が混在すれば、消費者の間に混乱が生じかねません。