米格付け見通しを「安定的」に引き上げ=S&P

20130610-00000094-reut-000-3-view格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は10日、米国の格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。

米国が、年明けの減税失効と歳出の自動削減開始が重なる「財政の崖」を回避したことに言及したほか、税収増や経済情勢の改善が債務圧縮の一助となり、「目先の格下げの確率は3分の1以下」に低下したとの見方を示した。

S&Pは声明で、税収が最近増加していることに加え、長期的な財政問題への取り組みによって米国をめぐる見通しが改善したと指摘。一方、与野党の溝がここ10年で深まっているとし、長期的問題に対する政策担当者の対応能力に懸念を表明した。

同時に、今年終盤に行われる債務上限引き上げをめぐる議論が「急激かつ予期されていない歳出の引き締め」に至ることは想定していないとし、そうなった場合、債務返済などに壊滅的な影響が及ぶ恐れがあると指摘した。

また、米政府は9月の年度末にかけ、債務発行額の追加引き上げを承認する必要が出てくるとの見通しを示した。

「現在の『AAプラス』格付けは、長期的な財政圧力に対する米国の政策担当者の対応能力が、最上級の格付けを有する国の政策担当者に比べ、劣っていることをすでに織り込んでいると確信している」とし「米国で債務上限引き上げをめぐる(与野党の)対立が繰り返されると予想している」との見解を示した。

米債務の対国内総生産(GDP)比率は今後数年で84%近辺で安定すると指摘し、これにより、高齢化に伴う将来の歳出圧力への対応で当局者は一定の猶予が得られると分析した。

ソラリス・グループのティム・グリスキー最高投資責任者(CIO)「堅調な株価動向は税収を押し上げており、これは明らかにプラスの材料だ。景気は引き続き緩慢なペースであっても、安定的な成長軌道をたどっている。債務水準はおおむね安定化しており、これが今回の格付け見通し引き上げに反映している」との見方を示した。

ウェルズ・ファーゴ・ファンズ・マネジメントの首席ポートフォリオ・ストラテジスト、ブライアン・ジェコブセン氏は「財政赤字をめぐる状況が改善していることから、格付け見通し引き上げは理にかなっている。しかし、信用格付けがデフォルト(債務不履行)発生の確率を評価するものであるのなら、米格付けは『トリプルA』が適切であり、S&Pはそもそも米国の格付けを引き下げるべきではなかったはずだ」と述べた。

格付け見通し引き上げを受け、ドルは対ユーロや円で上昇したほか、米式市場ではS&P総合500種指数は<.SPX>が小幅高で推移した。米30年債利回りは一時、1年2カ月ぶりの高水準をつけた。

S&Pは2011年8月、米国の格付けを「トリプルA」から「AAプラス」に引き下げ、格付け見通しを「ネガティブ」としていた。