福岡の2施設、「温泉」じゃなかった 井戸水使用や基準不足

消費者庁は4日、ホームページなどで温泉の表記を偽ったことが景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、福岡県筑後市の船小屋温泉郷の老舗ホテル「グランドホテル樋口軒」と、同県糸島市の浴場施設「まむし温泉」に措置命令を出し、改善を命じた。温泉の不当表示に対する措置命令は九州では初めて。

 調査を担当した公正取引委員会九州事務所によると、樋口軒は「炭酸泉は神経痛やリウマチ、心臓病に効果のある温泉です」などとホームページやパンフレットで炭酸泉の療養効果をPRしていたが、温泉に含まれる二酸化炭素(CO2)の量は、環境省が定めた1キロ当たり千ミリグラム以上という炭酸泉の基準を下回っていた。温泉施設の営業に必要な県の利用許可も得ていなかった。

 まむし温泉は、井戸水を沸かして使っていながら、「温泉」を名乗り、ホームページでは「源泉かけ流し」とうたって営業していた。温泉法では、源泉の温度が25度以上か、硫黄やCO2など19種類の物質のいずれかを一定量以上含むことが温泉の条件だが、井戸水はどちらも満たしていなかった。

 取材に対し、樋口軒の清水稔大取締役は改善を終えたとして「明治の創業以来、炭酸泉として営業してきたので疑わなかった。認識不足を反省している」と説明。まむし温泉の高江忠史社長は「温泉との言い伝えがあり、温泉と思っていた。指導に従って改善したい」としている。

 両施設が県の許可を得ないまま温泉として営業していたことについて、福岡県自然環境課は「今後は何らかの対応を考えたい」としている。