緩和マネーで右往左往 「米の思惑」市場は動揺

世界の「緩和マネー」が、金融市場の動揺を誘っている。株高を演出してきた米国と日本の金融緩和だが、米国における緩和縮小の思惑をきっかけに売買が交錯。高値と安値の振れ幅が大きい展開となり、巨額資金の流れの方向感が見えなくなっている。

 「スピード違反で駆け上がった分、調整局面に入ったときの幅も大きい」。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、足元の金融市場をこう分析する。日銀の大規模な金融緩和がドル買いを誘い、株式市場にも資金が流入。円相場は5月に一時103円台まで下落し、日経平均株価も1万5900円台まで上昇した。この流れを一変させたのが、米国の金融緩和縮小の思惑だ。5月22日に米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が金融緩和の縮小に言及した。

 通常、景気を刺激するために金融緩和を行う。つまり景気が良くなって初めて、金融緩和の縮小が実現する。だが、金融市場では「米国景気は緩和マネーで“お化粧”されている」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト)とみて、緩和縮小が米国景気に冷や水を浴びせるとの思惑が広がった。これがドル売りにつながり、行き場を失った資金は比較的安全資産とされる円に向かった。

 4日の東京外国為替市場の円相場は、1ドル=99円台まで円が買われた後、一転して円売りが強まり一時100円台まで下落した。前日終値比271円高の東京株式市場でも、高値と安値の振れ幅は約550円と値動きが荒かった。

 振れ幅の大きい調整局面は今後も続くのか。市場関係者は7日に発表される米雇用統計に注目する。市場予想を上回れば、米金融緩和の縮小観測が強まる可能性もある。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「落ち着きのない動きが、数週間続くのではないか」と述べ、調整局面がしばらく続くと分析している。