レスリング 沙保里、五輪復活へ「情け無用」ソフト・上野に宣戦布告

20130530-00000226-sph-000-1-view当地で29日に開かれた国際オリンピック委員会(IOC)理事会で、20年夏季五輪で実施する残り1競技の候補に選ばれたレスリングは、9月8日の総会(ブエノスアイレス)での存続決定を目指す。五輪3連覇の吉田沙保里(30)=ALSOK=は08年北京五輪金以来3大会ぶりの復帰を狙う野球・ソフトボールとの一騎打ちを予想。群馬・高崎市内で会見したエースの上野由岐子(30)=ルネサス高崎=に宣戦布告した。

レスリングが最終候補に残り「跳び上がるほどうれしかった」と喜んだ吉田は、すぐに勝負師の顔になった。「これからが本当の勝負スよ。予選が終わり、9月が決勝戦です」。20年夏季五輪実施競技の残り1枠が決まる方向の9・8IOC総会へ向けて、早くも戦闘態勢に入った。

 一抹の不安と闘いながら見守った理事会では、3競技が選ばれた。野球&ソフトボール、スカッシュが選ばれ、有力といわれた空手が消えた。「みんな空手(が残る)と言っていたから、野球とソフトが入ったのは意外だった」。しばし驚いた後、逆転で支持を得た野球&ソフトボールがレスリングの復帰を阻む最大のライバルになると、五輪3連覇の勝負勘で察知した。

 どちらもメダルが期待される日本のお家芸。ソフトボールの剛腕エース、上野は同い年で共に日本を代表する女性アスリート。04年アテネ、08年北京を戦ったチーム・ジャパンの仲間でもあるが、吉田は即座に宣戦布告した。「厳しい言い方になるけど、勝負に情けは無用。残らなければここまで来た意味はない」。国民栄誉賞を受賞した無敵の女王は現地で3つの金メダルを首にさげ、特訓した英語で不慣れなロビー活動を展開。日本協会の福田富昭会長(71)が「3つの金メダルを見せて活動した吉田の存在が大きかった」と感謝するほど頑張った。試合同様、努力が結果につながり、自信を深めた。

 ブエノスアイレスを舞台にした上野との直接対決さえ、実現すれば望むところ。IOC総会後にはV11がかかる世界選手権(9月16日開幕、ブダペスト)も控えるが、吉田は「協力できることはしたい」と協力を惜しまない構え。高速タックルで剛速球に勝つ。

 ◆投票VTR
 ▽1競技目 最初の投票でレスリングが8票を獲得し、最終候補に残った。
 ▽2競技目 投票は2〜8回目。最初に空手が5票を獲得したが、過半数に届かず。除外の決選投票を含め7度選考があり、最後は野球・ソフトボールと空手の争いに。1競技目の投票で0票だった野球・ソフトボールが9票を獲得し、候補入り。
 ▽3競技目 投票は9〜11回目。1度目は空手が5票でトップだったが、過半数に届かず。0票のローラースポーツとウエークボードが除外。2度目はスカッシュが5票に伸ばす一方、空手は2票で最下位となり、除外された。残るスカッシュ、武術太極拳、スポーツクライミングで3度目の投票が行われ、スカッシュが8票を獲得して過半数を突破。最後の1枠に滑り込んだ。

 ◆投票方法 ロゲ会長を除く14人の理事が無記名で1競技に投票。過半数(8票)を獲得した1競技を選出していく。トップが7票以下の場合は最下位の競技を除外(同数票の場合、0票はすべて除外。1票以上なら除外の決選投票)し、過半数になるまで投票を続ける。