「釣り穴場」鹿島港南防波堤 後を絶たぬ侵入者 茨城

20130529-00000078-san-000-7-view■68人死亡 マナー徹底呼びかけ

 鹿島灘の沖合に延びる危険な鹿島港南防波堤(通称・南堤)=神栖市=への侵入者が後を絶たない。全長約4キロの南堤は高波をかぶり危ないため立ち入り禁止区域となっているが、「釣りの穴場」として知られており、これまでに侵入者68人が波にのまれるなどして死亡。無謀な“太公望”が増える夏を前に、鹿島海上保安署などは警戒を強めている。

今月10日夕、南堤で行われた鹿島海上保安署と県鹿島港湾事務所による合同パトロール。第1ゲートの鍵を開け、車で約500メートル進むと、堤防脇に重ねられた消波ブロックに乗って釣りをする人の姿があった。

 この日は5人前後が南堤に侵入。海保署員が警告すると、渋々と去っていった。「自分は大丈夫と思っているのだろうが、足を滑らせて海に落ちたら上がって来られない」と鹿島海上保安署の福田秀市地域防災対策官は警鐘を鳴らす。

 南堤は昭和38年に着工。幅約17メートルでL字型に曲がった堤防には関係者以外の立ち入りを防ぐため、鍵のついた高さ約3メートルの2つのゲートを設置している。

 しかし、釣り好きの間ではクロダイなどが釣れるスポットと評判で、釣り人はあの手この手で南堤に侵入。ゲートを壊される場合もあれば、合鍵が出回っているとの情報もあるという。昨秋には第2ゲートが強風や高波で破損し、現在は第1ゲートを抜ければ堤防先端まで行ける状態だ。

 津波被害の大きかった東日本大震災発生後に侵入者は減ったというが、昨年も鹿嶋署が十数人を軽犯罪法違反(禁止場所への立ち入り)の疑いで摘発。南堤に侵入した男性は「68人が死亡したのは知っている。あそこで命を落とすのは自業自得だ」と意に介さない。

 県鹿島港湾事務所では、今夏にも第2ゲートの修復を予定。「複製しにくい鍵を使うなど対策を考えたい」と語るが、「結局、イタチごっこになる」と頭を抱えている。

 福田地域防災対策官は「命を落としてからでは遅い。本人の意識の問題で、マナーを守ってもらうしかない。徹底して呼びかけていきたい」と話していた。