奈良小1女児殺害事件 小林薫

奈良小1女児殺害事件は2004年11月17日に起きた。誘拐された少女の母親の携帯に「娘は預かった」とのメールが入る。その後、殺人事件に発展。死因は水死と見られている。少女の遺体にはいくつもの傷があり、歯が抜かれていることも判明した。なお、犯人は一ヶ月以上にわたり潜伏を続けていたが、12月30日に奈良西署捜査本部は誘拐容疑で毎日新聞配達員小林薫容疑者(36)を逮捕した。
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奈良小1女児殺害事件【第一報】側溝で小1女児の遺体発見 奈良県警が殺人などで捜査

18日午前零時ごろ、奈良県平群町菊美台の側溝で、小学生ぐらいの女児が死んでいるのを通り掛かった男性(64)が見つけ、110番した。

奈良西署などが現場で遺体を見つけ、女児は6歳の小学1年と両親が確認した。県警は殺人、死体遺棄容疑事件として捜査を始めた。

28歳の母親から「娘が帰宅しない」と17日、警察に届け出があった。女児は同日午後1時ごろ、学校を下校したとみられる。母親の携帯電話に同日午後8時ごろ「娘は預かった」とメールがあったという。

同署管内では不審な男がうろついているとの情報があったが、同署は確認していないとしている。

現場は奈良県西部の新興住宅地。(2004年11月18日)
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フィギュア萌え族の犯行を示唆したジャーナリスト大谷昭宏氏の話

大晦日の大荒れのお天気同様、大変な年末年始でありました。暮れの30日には、奈良の小学生女児殺害事件で36歳の小林薫容疑者の逮捕。今回はお正月なのでおめでたい話で行きたいところだが、どうもそんな気分にはなれない。奈良の女児事件でやはりはっきりさせておきたいことがあるのだ。

この欄でも私は事件について再々、怨恨などではなく、異常な少女性愛者による犯行ではないかと書いて、近ごろ特に目につくいわゆるフィギュアや萌え族と言われる一部の人たちの嗜好に対して疑問を呈してきた。

逮捕された小林容疑者もやはり携帯電話には、幼女の裸体の写真や動画が数十枚も入っていたといわれるし、その類のビデオも多数押収されている。ほら、言った通りだ、と言いたいのではない。
ただ、私が事件直後からそうした性愛を容認するどころか助長するような社会に歯止めをかけるべきだとコメントしてきたところ、その手の嗜好を持つ方たちから事務所あてに抗議の電話やメールが殺到。加えて配達証明つきの公開質問状まで送りつけられてきた。この点についてははっきりさせておきたい。

もとより私は人の趣味は自由だと思っている。だが、公開質問状での「その類の嗜好についてきちんと取材したのか」という指摘を待つまでもなく、実際に大阪の日本橋など、マニアが集う場所も取材してみたし、インターネット上でのやり取りも見せてもらった。そこにあったのはここで書くのもはばかれるような幼女や少女を性的に弄ぶというよりは、加虐的、嗜虐的な傾向の強いものであった。そうした趣味の人たちから寄せられる抗議の大半は、それらの趣味の中にも種々あって、それぞれ傾向が違う。なのになんでもかんでも一緒にするな、というのがまず一つ。もう一つは、あくまでバーチャルな世界のことであって、そのことと犯罪は結びつかないというものである。

だけど、世の中にはさまざまな人がいる。みんながみんな、きちんと境目を設けられるものではない。そうである以上、何らかの歯止めをかけることが必要なのではないか。もし、欧米であのような劇画や動画を流したとしたら、厳しい懲役が待っている。

今回の事件で被害にあった女児は一体、自分に対して何が目的で、あのような目にあわされたのか、まったくわからないまま亡くなっていたのではなかろうか。社会がそんな被害を未然に防ぐために努力するのは、いわば当然のことではないか。

それでも彼らは人の趣味趣向に言いがかりをつけるなと言い張るのだろうか。警告を発するものには一方的に質問状を送りつけるのだろうか。利己と、自己しか彼らの目には映らないようになっているとしか私には思えない。
●矢幡洋 西武文理大講師(人格障害理論)の話
サディズム感じる。携帯のワン切りなどで不安をあおり、身代金の要求もないままに死後の写真を送るなどの手口からは、特に楓ちゃんのお母さんへの奇妙なまでのサディズムを感じる。利益もないのに意味もなく人の心を傷つけ、屈辱感を与えることに自分の強さを感じる意地の悪い精神構造が見える。死後に撮影した写真を送るのは、イラクで人質を殺害したシーンをインターネットで公表する犯人グループからヒントを受けた可能性もある。
●福島章 上智大名誉教授(犯罪心理学)の話
ゲーム感覚の殺人。携帯電話で母親に画像を送りつけた点からみて、普通の性的欲求を持った誘拐殺人ではなく、快楽殺人の要素を感じる。犯人は他人にできない事をやったという自己顕示欲の強い人間だろう。インターネットなどでもそういう画像がはんらんする中で、犯人は「携帯電話、メール、画像」という新しい道具を使って、ゲーム感覚で殺人をし、世間を驚かすことを楽しんでいるこれまでにないタイプの事件ではないか。
●森武夫・専修大学名誉教授(犯罪心理学)の話
「遺族に再び恐怖心を与えることに喜びを感じているサディスティックな性格なのだろう。自分の存在をアピールする意味もある。携帯の発信地域が探知されることを知っており、そのリスクを計算できるだけの知能を持っている」
●ジャーナリストの大谷昭宏さんの話
「捜査の動きを見るため、やったのではないか。この家族に恨みを持っているように見せかけただけかもしれない。メール発信地域以外に住んでいて、あえてそこに入り込み、捜査を攪乱(かくらん)させようとした変質者ではないか」
●作田明 聖学院大講師(犯罪心理学)の話
「犯人は自己顕示欲が強く、最近報道が沈静化したことに不満で物足りなさを感じていたのだろう」と新たな犯行予告の動機を分析。そのうえで「最初から計画的な犯行で、犯人の知能は高いが、現実生活では社会的に評価されず、うっ屈しているのではないか」と犯人像を推測する。また、犯行予告について「捜査のかく乱も考えられる。同じ地域からの発信は新たな手がかりを与えず、犯人の居住地から離れていれば、捜査が自分に及びにくく都合がいい」と話した。「犯行に結びつくモデルがインターネットやビデオなどにあるのではないか」と、何かを模倣した犯罪だと指摘する野田正彰・関西学院大教授(精神病理学)は、動機について「しつように被害者の家族に連絡しているので、怨恨(えんこん)説も出てくるかもしれない。だが、合理的な怨恨があるわけではないと思う」と推測。犯人像を「非常に加虐的で小児性愛の嗜好(しこう)があり、携帯電話中毒で人間関係は希薄に思われる。犯行予告には家族へのサディズムがあるが、自己顕示性を発揮したのではないか」とみる。作家の高村薫さんは「妹にまで危害を加えるという予告や、被害者が簡単に車に乗ったという情報などを常識的に考えれば、犯人が被害者の顔見知りであり、家族とどこかで接点があったと思うのが普通だ」と話し、「面識のある犯人が、たまたま異常な趣味を持っていたと考えなければならないのではないか」と指摘する。その上で「学校と家を往復する小学1年生と接点のある大人は限られているのに、犯人が捕まらずに1カ月というのは、あまりに長い。凶悪事件の検挙率が低いのは時代が変わったからということではなく、情報や新しいツールにとらわれすぎているからではないか。基本的な捜査に立ち返るべきだ」と捜査に苦言も呈した。

奈良小1女児殺害事件 小林薫

遺体発見までの時系列
17日13:15       被害者が別の女児二人と小学校東門から学校を出る
  同13:30       被害者が学校のグラウンドにて一人で遊んでいるのを目撃される
  同13:40       被害者が母親と通話(学校近く)
  同14:00       被害者が誘拐される(学校と被害者宅の間)
  同14:30以降   母親が自宅へ帰宅、被害者不在を確認し近隣住民と捜索開始
  同夕方       母親の携帯へワン切数回(被害者宅近くの公園)
  同16:00以降   死亡推定時刻
  同18:45       通報
  同19:55       母親の携帯へワン切着信2度(遺体遺棄現場近く・王寺周辺)
  同20:04       母親が近くの公園を捜索中携帯が被害者画像添付メール受信(平群周辺)
  同20:27       被害者の携帯電話の電源が入り、基地局受信(平群周辺)
  同23:45       母親の携帯電話へ不信電話(場所不特定・プリペイド式携帯?)
  同23:47       母親が被害者の携帯電話へ電話するも不通
  同23:48       母親の携帯電話へ2度目の不信電話「間違いました」(場所不特定・プリペイド式携帯?)
18日00:05       遺体発見(被害者宅から直線距離約7km)
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